広島・長崎の核爆発から第五福竜丸の被ばくと原子力発電、チェルノブイリの原子力事故を経て福島の原発の核事故までの事象に対応した芸術表現を一瞥する。
反核や反原発ではなく、「非核」としたのは核の問題を幅広くとらえようとしているからだろう。作品はメキシコのシケイロスの「都市の爆発」(1936年)から丸木位里・丸木俊「原爆の図」(1950年)の紹介にはじまり、文学作品や中沢啓治の「はだしのゲン」(1973−85年)、そして市民たちが描いた原爆惨事の絵画郡にいたる。
さらに第五福竜丸の被ばくと原発、チェルノブイリ以後の表現活動を振り返る。最後に3.11以後の非核芸術をみてゆく。そのなかで文学者や映画の動向なども盛り込んでchimpom 、ヤノベケンジ、風間サチコ、増田常徳、黒田征太郎などの作品を紹介している。核の問題を考える契機や素材としてあらためて芸術表現を見直すことは重要だろう。
なお著者は丸木美術館学芸員。